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外伝「結界魔術師、アフレックの日誌」 外伝「結界魔術師、アフレックの日誌」 編集

傲慢の塔。

 

はるか昔、隆盛を極めた王国の、おごれる王が建造したと言われる。

今となってはその面影も薄く、強力なモンスターの住処と化していた。

 

その塔に結界を張り、モンスターを塔の中に抑え込んでいる魔術師がいる。名前をアフレックという。

 

今回発生した傲慢の塔の異変、それに関係すると思われる事柄が、彼の日誌に記載されていた。

 

 

これは彼から提出された、その日誌の一部である。

5月 3日 - 傲慢の塔、本日も異常なし

5月 3日 - 傲慢の塔、本日も異常なし 編集

今日もまた、傲慢の塔に異常は発生しませんでした。

 

タラス様から命を受け、この塔に結界を張るようになって、早くも幾年月。
冒険者の人達は塔の探索を進め、10階から50階、今や最上階すら踏破しています。

 

私はと言えば、今日も今日とて結界を守り、この塔からモンスターが逃げ出さないように見張るお仕事です。

 

 

いえ、決して不満なんてありません。

 

 

この塔にいるモンスター達は本当に恐ろしいのです。前に一度だけ足を踏み入れたのですが、

メデューサと言う、髪の毛の代わりに頭からたくさんの蛇が生えているモンスターに出くわしてしまいました。
その恐ろしさと言ったら、私のような理論倒れの魔術師にとっては魂が消えるほどの恐怖でした。

 

時折、冒険者の方からお話をお聞きするのですが、塔の上層ではメデューサすら

かわいいと思えるほどのモンスターたちが跋扈しているとか。とてもとても、想像すらつきません。

 

ですが、私はそれで良いのだ、と思うのです。私が得意とする結界の魔法は、

そんな恐ろしいモンスター達すら塔の中に閉じ込めることができるのですから。


戦う力を持たない人達の生活を守るのが、私の使命であり、誇りなのです。

 

 

5月17日 - 傲慢の塔、本日も異常なし(おかしなウィザードを見かける)

5月17日 - 傲慢の塔、本日も異常なし(おかしなウィザードを見かける) 編集

今日もまた、傲慢の塔に異常は発生しませんでした。

 

それでいいのです。異常がない事こそ、私達が使命を果たし、人々の生活が守られている証拠なのですから。

ですが、今日はちょっとだけ、変わったことがありました。珍しく、塔の表門から魔術師がやって来たのです。

 

塔の表は黄昏の山脈とつながっているから、地点記憶の転移魔法は使えないはずです。

 

と、いう事はその魔術師は歩いて黄昏の山脈を抜けてきたのでしょう。冒険者としても中々の腕利きだという事です。
彼は私に会釈をして、2階への階段を上っていきました。最近の実力ある冒険者であれば、珍しい事ではありません。

 

 

小一時間ほどして、その魔術師が階段を降りてきました。

そして、また私に会釈をして、塔の表門から出て行ったのです。

 

帰還の巻物も、転移の魔法も使わない魔術師とは珍しいので、この日記に書く事にしました。

 

ちょっと気になるのは、帰り際に私に会釈をした際、その魔術師が「すまないね」とつぶやいた事です。
私は彼に、何も迷惑をかけられた覚えはないのですが、聞き間違いか何かだったのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月20日 - 傲慢の塔、本日も異常なし(モンスターに元気がない?)

5月20日 - 傲慢の塔、本日も異常なし(モンスターに元気がない?) 編集

今日もまた、傲慢の塔に異常は発生しませんでした。ですが、冒険者の方から妙な話を聞きました。


塔の低階層に出現するモンスター達に、元気が見られないと言うのです。

結界魔法の威力を上げた覚えもありませんし、おかしな話です。

 

 

私以外の結界を担当している魔術師に様子たずねてみたところ、むしろ調子は良くて、

塔の隅々まで結界の力が浸透するのを実感できるほどなのだそうです。

 

そして、おかしな、と言えばそう!

 

メデューサ、あの恐ろしいモンスターの髪型が、蛇たちが元気をなくしてダレてしまい、

ストレートヘアになっているのだそうです!ちょっと実物を見てみたい、なんて思ってしまいました。

 

念のため、タラス様宛のレポートを伝書鳩を使って報告しておきました。何事もなければ、良いのですが。

まあむしろ、モンスターに元気がないのは良いことだと思えます。人々への脅威が弱まるのですから。

 

 

5月30日 - 傲慢の塔の様子がおかしい?(強力なモンスターがなぜそんな場所に?)

5月30日 - 傲慢の塔の様子がおかしい?(強力なモンスターがなぜそんな場所に?) 編集

懇意にしている冒険者の方から、物騒なお話を聞きました。

 

傲慢の塔の特定階層にのみ出現する、強力なモンスターがあらゆる階層に出現している、というのです。

大急ぎでレポートを作成し、タラス様に伝書鳩を送りました。ですが一体、どういう事なのでしょう?

 

特定階層にのみ出現するモンスターは熟練の冒険者でも一筋縄ではいかないものが多く、

特に念入りに結界を張って、その階層からは出て行かないように気をかけていると言うのに。

 

結界の魔法は、子供の遊びで言うと「あやとり」に似ています。一定の法則と順番で、

"糸"つまり魔力をあやつり、望む効果と形を編み上げていくのです。

 

 

何か嫌な予感がします。

 

 

私は、私達は、どこかで糸のあやを取りそこねてしまっているのはないでしょうか。

 

 

6月14日 - 傲慢の塔、異変発生(モンスターが逃げ出した!)

6月14日 - 傲慢の塔、異変発生(モンスターが逃げ出した!) 編集

嫌な予感が的中してしまいました。


傲慢の塔、そのほど浅い階層にいるモンスターの一部が、塔から逃げ出してしまったのです!

 

その事実を私が知るのとほぼ同時に、タラス様からのメッセージが届きました。

傲慢の塔に張られている結界の、魔力の流れに細工がなされている、との調査結果でした。

 

先日書いた「あやとり」に例えて言えば、"糸"が細工によっておかしな場所にかけられ、

私達が望むのとは違う形に編みあがってしまっている、という事です。

 

 

おおざっぱに言うと、魔力の"糸"が太くされ、その分、目が粗くなっているのだそうです。

他にも、結界の形自体に細工が行われているようです。

 

先日からの異変は、全てこの事が原因だったのです。

 

魔力の"糸"が太くなった結果、一部のモンスターは、混乱して元気をなくし、

"糸"の目が粗くなった結果、強力なモンスターは特定階層から抜け出すことができ、

地上に近い階層のモンスターは結界自体をすり抜けることができたのです。

 

私は結界の維持を他のウィザード達に任せ、急ぎ象牙の塔へ一旦帰還し、タラス様に直接の指示を仰ぎました。

 

タラス様はこう仰いました。

 

 

「『事ある度』の気もするが、今回も例には漏れぬ」

怪物退治は我らの業ではない。アデンの冒険者の出番だろう。」

「アフレック。お前はしばし傲慢の塔を離れ、冒険者へ告知し、協力を仰ぐのだ」

「その間に、結界の方は私が新たな術式を作っておく。」

 

そう指示を受け、タラス様の前を退出しようと背を向けた時、タラス様が小さくつぶやかれました。

 

 

「まったく、あの男は・・・」

 

 

私の事ではなさそうだったので、聞き返すのはやめておきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人でも多くの冒険者へ呼びかけるのであれば、ギランの町が良いだろうと思い、私は準備を始めました。

 

 

それにしても、です。

 

今回の件、一体、誰が何のためにこんな事をしたのでしょう。

 

不審な点が多いのです。傲慢の塔のモンスターをアデンへ解き放つだけなら、こんな遠回りな方法は必要なく、

結界を壊してしまえばよかったのです。多くの物事がそうであるように細工をするくらいなら壊す方が楽なのですから。

 

 

その意図には私も考えが及びませんが、"誰が"については心当たりがあります。

 

5月17日。あの日、傲慢の塔の表門から現れ、私に「すまないね」と言って、去って行った魔術師。
彼が何らかの意図をもって、この件を引き起こしたに違いありません。確証はありませんが、確信があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ですが、今、私に求められているのはこの件の犯人探しではありません。

 

タラス様が新たな結界を作り上げるまで、傲慢の塔のモンスターを

冒険者の方に抑えてもらえるよう、協力を仰ぐことです。

 

急いで、ギランの町へ向かうことにしましょう。